小豆をすくって味わう京都『今西軒』の「あんてぃーく」
身近な人のために炊いた小豆
『今西軒』と聞いてまず思い浮かぶのはおはぎだろう。つぶあん、こしあん、きなこの3種類を目当てに朝から客が訪れ、早々に売り切れる日も少なくない。
そんな店に、もう一つの小豆の名物「あんてぃーく」がある。
始まりは商品として売るために考案したものではなかった。小豆を炊いた日に、先代が親戚や知人へ声を掛けて分けていたのが原型だという。汁気の中に小豆が浮かぶ一般的なゆで小豆とは違い、こちらは粒をたっぷり残した仕立て。身近な人に振る舞っていた味が、やがて瓶入りの商品になった。
ユニークなのはその名前だ。四代目の今西正蔵さんは、商品名は分かりやすい方がいいと考え、あんこだから「あんてぃーく」。少しひねりを利かせながら、覚えやすい名前に落ち着いた。手書きの文字を使ったラベルにも、気取りのない雰囲気が表れている。
おはぎと同じ小豆、違う炊き上がり
使う小豆は「大粒」の選りすぐり。ただ、おはぎのあんを単にゆるくしただけではない。水にさらす加減などが異なり、途中から作り方そのものが変わる。豆の輪郭をしっかり残しながら、とろりとした部分も共存するのが「あんてぃーく」の持ち味だ。
そもそも、こちらのあんこ作りは小豆の扱いに時間を惜しまない。看板のおはぎでは、つぶあんに2日、こしあんには3日をかける。小豆を炊き、さらし、雑味を取り除きながら仕上げていく。長く続けてきたその仕事があるからこそ、粒を主役にする「あんてぃーく」でも、小豆そのものの存在感が際立つ。
おはぎなら餅米を包むためのあんこだが、こちらには受け止める生地が少ない。主役は最初から最後まで小豆。その潔さが、この商品の面白さでもある。
スプーンですくってまずはそのまま
蓋を開けたらまずはスプーンを入れたい。ゆるいあんの中から、ふっくらとした小豆がごろごろとすくい上がる。口に運べば柔らかな粒がほどけ、続いて甘みが広がる。なめらかに仕上げたこしあんとも、粒とあんが一体になったつぶあんとも違う。小豆を「食べる」感覚が前に出る。
楽しみ方はそれだけではない。おすすめはバタートースト。焼いたパンにバターを塗り「あんてぃーく」をたっぷりとのせる。小豆の甘みにバターの塩気とコクが重なり、パンにもなじむ。
冷たいアイスに添えるのもいい。乳味のあるアイスと小豆は相性がよく、ゆるい仕立てだからソースのようにも楽しめる。今日はスプーンでひと口、明日はパンに、次は冷たいデザートに。一瓶あれば、食べ方を決めずに遊べるのがいい。
おはぎ屋だからこそのこだわり
もちろん『今西軒』の小豆を知るならおはぎも外せない。つぶあん、こしあん、きなこはいずれも1個240円。ひと目でもあんこの多さが分かる。それでいて、食後に甘さを重く残さないことまで考えて仕立てられている。
同じ小豆を使いながら、餅米と合わせればおはぎになり、粒を生かしてゆるく炊けば「あんてぃーく」になる。比べてみると、一軒の店が小豆をどう扱っているのかがより鮮明になる。おはぎを食べたことがある人にこそ、次に試してほしい一瓶だ。
一瓶の先にも続く、あんこの仕事
「あんてぃーく」は店頭に並ばないため事前に電話で予約を。現在は地方発送をほぼ行わないが、百貨店で購入できる機会もある。おはぎのように買ったその日に味わうだけでなく自宅へ持ち帰り、食べ方を変えながら楽しめるところにも、この商品ならではの魅力がある。
先代が身近な人のために炊いていた小豆から生まれた「あんてぃーく」。そのままでも、パンやアイスと合わせてもいい自由さは、次の世代が描く新しい楽しみ方にもつながっていきそうだ。おはぎとは違う一瓶から、『今西軒』のあんこの奥行きが見えてくる。
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- 店名
- 今西軒
- 住所
- 京都府京都市下京区五条烏丸西入ル一筋目下ル横諏訪町312
- 電話番号
- 075-351-5825
- 営業時間
- 9:30~売り切れ次第終了
- 定休日
- 火曜・第1・3・5月曜(6~8月は月・火曜)
- 交通
- 地下鉄五条駅から徒歩約1分
- メニュー
- おはぎ(つぶあん・こしあん・きなこ)1個240円、あんてぃーく1,100円

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