• amakara.jp
  • 読みもの
  • 子ども
  • 子どもとごはんvol.9:大人の世界を体験『キュイジーヌ・フランコ ジャポネーズ Matsushima』

子どもとごはんvol.9:大人の世界を体験『キュイジーヌ・フランコ ジャポネーズ Matsushima』

子連れでの食事は、行き先を選ぶものですよね。連載「子どもとランチ、ときどきディナー」では、お子さまウェルカムなお店を紹介します。
今回訪れたのは、各地から届く野菜や果実を巧みに取り入れ、素材の味わいを素直に活かしたフランス料理で知られる、神戸・北野の『キュイジーヌ・フランコ ジャポネーズ Matsushima』。「大人の社交場を体験してほしい」という思いから、未就学児向けの「アンファン(子ども)プレート」と小学生向けの「お子様向けコース アンファン」の2種を用意。食材も、調理法も、大人と同じ。すっと背筋を伸ばし、大人と一緒に食事がしたくなるレストランです。

日本の感性を大切にしたクリアな料理

創業23年を迎える『キュイジーヌ・フランコ ジャポネーズ Matsushima』のオーナ・松島朋宣さんは、フランスの『ミッシェル・ゲラール』や西宮の『瀬田亭』を経て、須磨『フォレ・ド・リキュウ』の料理長を務め2002年、26歳の若さで独立した大ベテラン。

「日本の季節に対する感性を大切にした料理」をコンセプトに、旬の国産素材を活かし、シンプルな調理で素材感を強調した料理が真骨頂です。

どの料理もクリアで研ぎ澄まされた味わいは、子どもに食べさせても安心。「親として、子どもに豊かな食体験をさせてあげたい」と思わずにはいられません。

「大人と同じ!」子どもが笑顔になるコース

「創業時はお子さんが来たらパッとオムライスなどを作ってあげていたけれど、そのうち僕にも子どもができて、レストランという社交場を体験できる料理を出したいと思って」と松島シェフ。

例えば、小学生限定の「お子様向けコース アンファン」はアミューズ、スープ、神戸牛のステーキ、デザート2品という内容。大人のコースとの違いと言えば、皿数が数品少ないだけで調理やポーション(一皿の大きさ)は同じ。
中でもメインの神戸牛のステーキは「シンシン」と呼ばれるウチモモの中心を、オーブンで焼いては休ませることを繰り返す、フランス料理の技術で焼き上げたもの。

ソースに限っては、子ども限定のガーリック醤油味とし「お子さんが好きな甘辛い醤油ベースにしています」という配慮もありがたい一品です。

アミューズ
お子様向けコース アンファン7150円(サービス料別)より、アミューズ。長期飼育により味が濃い、「長谷川自然牧場」(青森県)の豚もも肉で作る自家製ハム、マスクメロンを盛り合わせに。
10
神戸牛のステーキ
神戸牛のステーキ。「もし残ってしまっても、親ごさんが喜んで食べてくれますから(笑)。子どもだからって出来合いのものは使いません」。付け合わせの野菜もまた、シェフが全国各地の生産者を開拓して懇意にし、取り寄せる格別なものであり、店の名物のひとつ。
10

静かに夢中でむさぼるワンプレート

未就学児限定の「アンファンプレート」は、季節のスープに加えてカモもも肉のコンフィ一本が登場(!)。さらに季節野菜のソテーやフルーツが添えられます。

カモのコンフィは、肉を塩などでマリネし、80℃〜90℃の旨み濃厚なガチョウの脂で4時間かけて火を入れ、提供前にオーブンで焼くという、大人と何ら変わらない調理で提供。

これは「骨付きの大きなお肉を手で食べたいかな、と思って」このスタイルになったと話す松島シェフ。

「骨を持って大きな肉を食べたことが無い子がほとんどだから、小さいお子さんでも夢中になってかぶりついて、全部食べてくれることが多いんですよ」と微笑みます。

アンファンプレート、カモのコンフィ
「アンファンプレート」6050円(サービス料別)。パン、ドリンク付き(リンゴジュース、ブドウジュース、ジャワティーから選択)。特別感があって、ときめく骨付きのお肉。実は汚れにくいテーブルクロスを採用しているところも、子連れにはありがたいポイント。
10

レストランは「大人の世界をのぞく場」

「あくまでも、当店はフランス料理店で、レストランは大人の世界をのぞく場として捉えてほしいと思っています」と話す松島シェフ。

そのため、例えば挽肉メニューやオムライスといった、子どもに合わせたメニューはありません。大人とほぼ同じメニュー、調理、素材はフランス料理店としての矜持。

「大人と子どもの料理をほぼ同じにして、同じようにお迎えするのは年齢で線引きする必要がないと思うからです」

「確かに、子どもはいきなり大きな声を出すし、行動も予測がつかないけれど、それを非難するのは周囲の心に余裕がない証。
寛容な国であってほしいですよね。ただし、子どもがきちんと食事する躾は家でして、外食はその成果を発揮する場であると考えています。
だから、当店ではルールを守ってください、と言います。その代わり、レストランを楽しんで大人と同様に食べてくれたお子様にはめちゃくちゃ褒めて、また来てね!と必ず伝えます(笑)」

「線引きするべきは年齢ではなく、教養である」という奥深い言葉には、松島シェフの飲食人であり一人の父親としての思いが込められています。

大人と同じ料理や素材のみならず、同じサービスやコミュニケーションなど、ヒト対ヒトの関係性を経験することも、子どもにとって特別な思い出になりそうです。

イメージ
10

子連れに嬉しいポイントまとめ

・年齢に合わせた2種のお子様メニューを用意
・子ども用カトラリーあり
・ベンチシート
・個室もあり

個室
店内には最大10名ほど入れる個室が。大人が14300円以上のコースをオーダーし、6名以上の場合は個室料が無料に。6名以下の場合は要個室料。
10
カトラリー
10

子どもとランチ、ときどきディナー

レストラン、ビストロ、専門店…おいしいお店は、大人のものだけではありません。お子様ウェルカムなお店の連載「子どもとランチ、ときどきディナー」。子連れ同士や、ファミリーでの食事に。

詳しくはこちら

writer

佐藤 良子

satoryoko

料理取材に徹して20年の食ライター。歴史が好きなため、料理史の観点から見るレストラン取材がライフワーク。日々賑やかな小学生2児の母。
instagram@ryocosugar