『下鴨茶寮』茶道の心を大切に、一期一会の想いでもてなす古都の老舗

安政三年の創業以来、京都ならではの文化や情景を料理やおもてなしに映し、訪れる人々を魅了する老舗料亭。四季折々の風情が目を和ませる庭や高野川の流れを愛でつつ、季節の食材をふんだんに使う懐石料理が味わえます。

伝統を守りながら革新的に

京都『下鴨茶寮』外観
河合橋の下流で鴨川と合流する高野川の清流、比叡の山並みが望める景勝地に建つ。取材時は、上賀茂神社と下鴨神社の例祭・葵祭の設えに。
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世界遺産に登録されている古社・下鴨神社御用達の料理人としてお供え用の膳などを作ってきた佐治家が創業。その後、現在の場所に店舗を移し、茶懐石料亭としての営業を開始しました。以来、170年近くにわたって地元客や観光客に愛され続けています。

2012年には、くまモンの生みの親で、全国の街や施設でリブランディングを手がけていた小山薫堂さんを店主に迎えました。小山さんが大切にしているのは「伝統に寄り添いながら、今を磨き続ける料亭でありたい」との想い。京野菜にいち早く注目したことでも知られるように、その土地で採れたものを、その土地に伝わる方法で料理する「土産土法」のスタイルを代々が守っています。

京都『下鴨茶寮』座敷
お客さまに合わせて、座敷は椅子席、座椅子席などで用意。
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京都『下鴨茶寮』テーブル席
テーブル席は主にランチタイムの会場として利用。貸し切りも可。
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季節の食材を創意工夫

数奇屋造の店内には「参蝉庵(さんぜんあん)」をはじめとする茶室も。手入れが行き届いた庭の緑や格調高い室礼を眺めつつ、家族や親戚と出かけるハレの日にふさわしい佳肴(かこう)が味わえます。

京都『下鴨茶寮』茶室
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京都『下鴨茶寮』茶室
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昼の懐石「福膳」のある日の椀は肉厚鱧の葛叩き。あしらいは管牛蒡と三度豆で、吸い口の柚子が華やかに香ります。向付に続いて供されるのは山海の珍味が美々しく盛り付けられた八寸。「季節感を大事に、目で舌で楽しんでいただければ」と総料理長の本山直隆さんは話します。

強肴(しいざかな)は琵琶湖の鮎の天ぷら。素麺で表現した水面を鮎が泳いでいるような躍動感が楽しめます。銀溜の椀、千鳥と下鴨神社の御神紋である双葉葵をモチーフにした特注の珍味入れ、切子の角長皿など、端正な器の数々も見ものです。

京都『下鴨茶寮』椀
椀物・鱧葛叩き
京都『下鴨茶寮』八寸
八寸
京都『下鴨茶寮』強肴
強肴
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菓心を物語る抹茶の菓子

茶道の精神を重んじる『下鴨茶寮』では、もてなしの心のひとつである“菓心”も大切にしています。そのスタンスはコース料理を締めくくる甘味にも表れています。

「すべてのデザートは私が考えて作っています」と話す総料理長はかつてパティシエを目指していたこともあるほど。なかでも「抹茶テリーヌ」は持ち帰りができるように商品化。茶道の三千家にも出入りを許されている『柳桜園茶舗』の上質な宇治抹茶と白あん、生クリーム、ホワイトチョコレートで作るテリーヌは、なめらかな食感とさわやかな香りが楽しめます。

醤油を粉末状にした「料亭の粉しょうゆ」。ちりめんじゃことナッツ、ドライフルーツのハーモニーが楽しめるが和洋折衷菓子「料亭のちりめんナッツ」など、オリジナル商品はどれも独創的。自分用に、贈り物用にと買い求める人も多いそうです。

京都『下鴨茶寮』抹茶テリーヌ
コース料理の最後の甘味として供されることも多い抹茶テリーヌ。白あんがベースなので、さっぱりした味わい。
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京都『下鴨茶寮』水物
水物・甘夏のブランマンジェ、桜桃
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