日本料理の美意識が鮨に宿る。大阪・豊中『鮨うえの』
会席の系譜を受け継ぎ、鮨へ。
大阪・北摂、豊中の地で24年にわたり日本料理の真髄を伝えてきた『一汁二菜 うえの』。その名店が2025年2月、『鮨うえの』へと転身を遂げた。
理由について若主人の上野純平さんはこう語る。
「長年、豊中店のコースで鮨を提供してきました。親父さん(店主・上野法男さん)が手がけたい業態であったこと、さらに箕面店が日本料理を提供しているため、スタイルを分けようと考えました」
料理長の柚上満太郎さんは、鮨店で3年の経験を積み、その後『一汁二菜 うえの』へ入門。上野法男さんの薫陶をみっちり受け、20年間日本料理の道を極めた人物だ。
今回の刷新は、柚上さんにとって、日本料理の研鑽を経ての”鮨への回帰”。「20年続けてきたスタイルを壊す怖さや自分の鮨が通用するのか、葛藤がありました」としながらも、伝統を盛り込んだ独自の鮨を創り上げた。
胃を温め、だしの香りと味わいで始まる
「『うえの』といえば創業時から大切にしているのがだしです。そのため、まずはだしを味わっていただきます」と柚上さんが話す通り、刷新した鮨コースは、会席料理時代の演出を踏襲した“だしの香り”からスタート。
ゲストが着席すると、北海道産真昆布を用いた昆布だしにカツオの本枯節を投入し、目の前で一番だしを引く。布で濾すその瞬間、香りはぶわっと店に充満し、嗅覚を刺激する。
引きたてのだしを用いるのは、冬ならば蓮根餅に銀餡をかけた品、夏ならばゼリー寄せや冷たい銀餡を掛けた品など。温度感と季節感を大切にした先付けと、続く椀ものが鮨への期待値を増幅。胃を温め、味覚を研ぎ澄ませる重要な役割を担う。
伝統技術を五感で楽しませ、日本料理の哲学を体現する幕開けだ。
設計された握りは「関西の味覚に」
これまで会席料理で供していたものとは異なり、新たに開発した鮨は「関西で好まれる、やわらかく丸みのある味わいを目指しました」と柚上さん。
ネタはこれまで付き合いのある鮮魚店より、伊勢や明石、福井、北海道といった各地から高品質なものを。それぞれのネタに合わせて丁寧な仕事を施す。
一方、シャリは「圧倒的な華やかな香りがありまろやか」という福井『河原酢造』の老梅有機純米酢をベースに、白酢のキレや黒糖のコクを独自にブレンド。熊本産米「森のくまさん」の粒感ある米と合わせることで、ネタに負けない味わいに。
鮨を口に運ぶと、人肌程度の温かいシャリがハラリとほどけ、咀嚼するうちにシャリとネタが渾然一体となる。
これら鮨の前後や間に先付けや椀もの、造り、焼き物、茶碗蒸しなどが続々と。日本料理と端正な鮨を同時に味わうことができるのが、こちらならではの体験だ。
お値打ちランチが新登場
リニューアルしてから1年が経つ今年2月には「感謝の気持ち」からお値打ちな平日限定の鮨ランチ3800円が登場。
1階と2階の個室限定というから、女子会やグループ遣い、子連れ利用などにぴったりだ。
「鮨は握ったら即、食べていただくのが醍醐味。そのため距離のある個室や2階にお運びして状態が変わってしまうことに抵抗がありました。そこで、運んでも冷めないよう温度を高めに握ったり、満足感のあるややボリュームを出したサイズにしたりするなどシャリとネタのバランスを調整。個室で気軽に楽しんでいただける内容の鮨を考えました」と柚上さん。
先の一番だしを用いた先付けに始まり、鮨8貫とミニちらし、茶碗蒸し、デザートが付いた魅力的な内容だ。
かつて会席時代にも3000円代のミニ会席が喜ばれ、「女性とお子様には絶対的に心地よく過ごしてほしい」という女将の考えのもと店作りが行われてきた。その「おもてなしの心」が、訪れる人の心を日常から解き放ってくれる。
data
- 店名
- 鮨うえの
- 住所
- 大阪府豊中市上野東3-1-5
- 電話番号
- 06-6853-3955
- 営業時間
- 11:30〜、18:00〜 一斉スタート
- 定休日
- 火曜、不定休日あり
- 交通
- 阪急豊中駅よりバスで10分、タクシーで5分、専用P13台(お昼は予約制)
- 席数
- 1階/カウンター7席
- 個室
- 1、2階/3室(~18名)
- メニュー
- 昼/3800円(平日、個室限定)、11000円。夜/16500円。
- https://www.instagram.com/sushi_ueno/

writer

佐藤 良子
satoryoko
料理取材に徹して20年の食ライター。歴史が好きなため、料理史の観点から見るレストラン取材がライフワーク。日々賑やかな小学生2児の母。
Instagram@ryocosugar
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