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神戸三宮駅近の隠れ家で、ベテランシェフのビストロ料理を。『ビストロ・エ・ヴァン・シュマン』

飲食店がひしめく神戸・三宮駅北側エリア。生田ロードと生田新道の交差点東のビル。エレベーターを4階で降り、茶室を思わせる小さな青いくぐり戸を潜る。靴を脱いで店に上がれば、そこは――!?

ベテランシェフの新境地は掘りごたつ席のビストロ

驚くことに、ビストロだった!
一歩入ると目に入ってくるのは、エッフェル塔やセーヌ川が描かれたパリや食の都リヨン、花がいっぱいの南仏の風景などの、アーティスト・吉本義巳氏による明るい色彩の壁画。だが、席は掘りごたつ式というギャップ。座って足をのばせば、日本人だからなのか、一気に寛いだ気分になる。

『ビストロ・エ・ヴァン・シュマン』の店内
パリや南仏をイメージした壁画に囲まれて、さながらフランスを旅している気分に。テーブルは掘りごたつ式でほっこり落ち着ける。
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ちょっと不思議感のあるユニークな造りは、和食の居抜き店舗だから。営むのは、ベテランの大町 誠シェフ。「店名のChemin(シュマン)は、フランス語で小径、畦道などの意味です。名シェフを目指して、地道に歩いていこうと思って」。2025年10月オープンしたこちらの店で、自身の原点といえるフランス料理を極めていくという。

『ビストロ・エ・ヴァン・シュマン』の入り口
茶室を思わせるくぐり戸のブルーが印象的。左の「道」、フランス語の「Chemin」、カタカナで読みも記された小さな看板が目印。
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大町シェフは、18歳から明石にあった『アンシャンテ』(現在、神戸・北野で営業)で、『アラン・シャペル』出身の友田誠樹シェフに師事。東京、神戸で修業を積み、26歳で独立して『フレンチレストランバール アンブラゼ』を開店、リニューアルして『フレンチバール・レストラン アンティーク』を営んだ。2017年からはハンター坂にあった名店『ペルージュ』(現閉店)を引き継ぎ、『キュイジーヌ・フィレール』で腕を振るってきた。神戸の街を、そしてフランス料理を愛するシェフの一人である。

『ビストロ・エ・ヴァン・シュマン』の大町シェフ
カウンターのオープンキッチンで大町シェフが一人で調理し、サービスも行う。ワインもすべてシェフがセレクトしている。
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記録より“記憶”に残る料理を

「美しいと撮影して記録に残すより、お客さんの“記憶”に残る料理を作りたい」と話す大町シェフ。「できることを常に練り上げて作り続けていると、迫力のある料理になるはず」。
その代表としてメニューに挙げているのが「ブイヤベース」だ。熱々が運ばれてきたストウブ鍋には、天然鯛、ホタルイカ、アサリなどがぎゅっと詰められている。湯気と共においしそうな磯の香りを放ち、食欲をそそられる。「魚介それぞれ別々にだしを取り、合わせるという驚くほど手間のかかる料理です」。ほんのりサフランが香るスープをひとくち飲めば、その奥行きの深い旨みに感動する。
このブイヤベースは、大町シェフが一番尊敬する『アンシャンテ』友田シェフ直伝。作る度に友田シェフへの感謝の気持ちを忘れないように、「さらにおいしく」との想いを込めたメニューである。

『ビストロ・エ・ヴァン・シュマン』のブイヤベース
ブイヤベース2人前4800円。天然鯛、ホタルイカ、アサリなど季節の魚介を使用し、それぞれのだしを取り、合わせて仕上げる。ニンニクのきいたアイオリソースを添えて。
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一番人気は、ほとんどの人がまずこれを注文するという「パテ・ド・カンパーニュ」。「試行錯誤を繰り返しながら、ずっと作り続けてきた。食べた瞬間に、旨い!と感じてほしくて」と大町シェフ。フォアグラ、鴨、豚を使っており、大きなサイズで出され、噛むほどに旨みが広がっていく。

『ビストロ・エ・ヴァン・シュマン』のパテドカンパーニュ
パテ・ド・カンパーニュ2500円。肉の旨みをぎゅっと凝縮させた大町シェフ自慢の一品。フランボワーズビネガー風味の赤キャベツのマリネ、季節のピクルスを添えて。ワインが進む。
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「食材オタクです」と笑う大町シェフらしく、鴨やジビエも得意料理。名物の蝦夷鹿ロースのカツレツや山ウズラなど、ジビエの季節には待ちかねた客が訪れ、アラカルトで堪能する。「青森県産窒息鴨のロースト」は、ハチミツ、赤ワインビネガー、デュカスパイスのラケソースを塗りながら焼いた、日本人好みの照り焼き風の一品。プラムの赤ワイン煮との相性も抜群で、赤ワインを呼ぶ。

『ビストロ・エ・ヴァン・シュマン』の鴨のロースト
青森県産窒息鴨のロースト2人前8000円(写真は1人前)。ビネガー、ハチミツ、デュカスパイスなどで作る、照り焼き風のラケソースで。デュカスパイスを纏わせ、プラムの赤ワイン煮を添えて。「料理の量は加減できるので、おひとりさまの利用も歓迎」とシェフ。
『ビストロ・エ・ヴァン・シュマン』のワインセラー
一角にあるワインルームに入ってワインを自由に選ぶことができるのも楽しみのひとつ。
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神戸のフレンチ料理界の番人

料理はアラカルト主体。味本位の料理を、気取らずに皆で取り分けて楽しむ。そのどれもが、食材を見極めて技を駆使したレストランレベル。正統派のフランス料理だが軽やかで、奇をてらうことなくシンプルで味わい深い。シェフが選んだワインとよく合って、グラスが進む。

ワンオペで、オープンキッチンのカウンターに立つ大町シェフ。「一人でできることを地道に続けていきます」。シェフの歩む道を、料理を楽しみながら共に歩いていこう。洋食文化が花開いた街・神戸のフランス料理店がいつまでも輝いているように――。

『ビストロ・エ・ヴァン・シュマン』のイラスト
吉本氏が来店する度にイラストを描いていかれるそう。壁には“道”にいろいろな人が登場してシェフと一緒に歩んでいる様が描かれている。
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